ナンコ盤 |
資料提供 町 健次郎氏 |
なんこ |
起こり、語源ともはっきりしない。中国の易からきた、神の意向を聞く手段であった・・など色んな説があるが、一般的には島津義弘が朝鮮の戦いから帰国した際、はしを使ったのが最初といわれている。
旧薩摩藩には古くから伝わり、酒席ではよく遊ばれていた事は確かで西郷隆盛もこよなく愛好していた事が文献に記されている。
なんこの漢字も、はしをそのまま使った「箸戦」「軟交」。又ゲームそのものからきた「何個」「飲ん講」がなまったものなどさまざまだ。遊びのルールは簡単で豪快、お互いが手の内に隠している珠(主にユスの角材)の数を交替で当てっこすればよい。負けたら焼酎を飲み、勝った人も和気あいあい。見物客も一緒に楽しむユーモラスなゲームである。
試合になると礼に始まり礼に終わる。気合のこもった大声で、相手を呑み込むように張り上げ、一剣必殺の示現流の太刀討ちにも似た遊び。いかにも薩摩人の気質にピッタリしている。よく四国の箸けんと対比されるが、似たようなものであろう。 |
瀬戸内のナンコ |
瀬戸内一帯では現在も、祝事や忘年会の席でナンコに興ずることは珍しいことではない。中心地である古仁屋の居酒屋で、客が割り箸を折ってナンコをしている風景も見た。
床間にナンコ台を置いている人も少なくはない。
ナンコは基本的に「ナンコ盤」という木製の台をはさんで、二人で向き合っての勝負になる。それぞれ三本持っている「タマ〈玉)」とよばれる棒を、自分の思う個数を手の甲で包み隠して台上に出し、合計の数を言い当てる遊びである。
向かいあった二人の間には、「ケンミ(検見)」が座る。いわば審判にあたる役目であるが、焼酎を注いで、それぞれに飲ませたり、勇ましい掛け声でその試合を盛り上げる役目も担っている。
負けた方が、あらかじめ注がれている焼酎を飲み干すルールで行う場合には、負け続けた方が口に運ぶ量が増え、たちまち酔いが回ることで冷静な計算能力を失って、更に負
け続けるパターンになることもある。棒を隠す手つきにも個性が出る。たくさん握っているかのように甲を浮かしてみせる持ち方、逆に、たくさん振っているにもかかわらず、甲を平たくした持ち方など、個々人が酔いながら編み出す策略が見え隠れして、観客も退屈はしない。
相手の数を読んで、合計数を言い当てる際は「合わせて○本!」という言い方で一向にかまわない。だが、伝わる独特な言い回しには、初めての者は戸惑うであろうが、味がある。年配の方々が魅せる、勇ましい声と仕草での場の盛り上げ方は、酒飲みの遊びとしては上品に感じる。
ナンコで使用される台は、横が一尺(約三十センチ)、縦七寸(約二十一センチ) で、玉は丸い棒で三寸三分(約十センチ)の長さである。床間にあると縁起がよいといわれ、新築祝いに大工から贈られたりする。 材料となる木は堅くて傷がつきにくく、よく音が響くものが好まれ、特に、クワ、ユス、コクタンの木が重宝される。ちなみに鹿児島で使われている台は、奄美大島のものより比較的小さめで、玉は角張っているようである。
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瀬戸内町でよく耳にする数え方は、次の通りである。〔 〕内の数字は玉の数で、○内の数字は、その呼び名の種類である。
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〔0〕 |
@ムナ
「無」を意味する方言。互いに〔0〕であることをさして「ムナムナ」とも言う。
Aフィタ
「空(から)」、「吹いた」の意 Bオテナシ
相手が〔0〕であることをさす。「御手軽」の意。この応用で、相手の手数をさして「オティチ」、「オテこ」、「オテサン」とも言う。
Cパラ
事前に禁じ手として「パラナシ」または「ムナナシ」(手持ち〔0〕の禁止)と言う。
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〔1〕 |
@テンノウヘイカ
「天皇陛下」の意味。この世に一人しかいないことから言う。戦後から使うようになった。
Aオナユク
意味不明。「1」または「5」をさす。 |
〔2〕 |
@ゲタンハ
「下駄の歯」の意味。下駄の歯は二つしかないことより。
Aジャン
ジャンケンのハサミ(チョキ)は二本指を出すことより。 |
〔3〕 |
@ゲタンメ
「下駄の目」の意味。下駄の箱は三点で固定されていることより。
Aイッパイ
相手へのふっかけとして、「いっぱい」、「たくさん」の意味。
Bインノシバリ
雄犬が小便をするときには片足をあげる。つまり、三本の足が地面についている様より。
Cサンコミッツ
「三個・三つ」の意味。
Dナンコミッツ
「ナンコの棒が三つ」の意味。
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〔4〕 |
@ヨンメイ
単に「4」の意味。
Aヨンジュウ
単に「4」の意味。 |
〔5〕 |
@オナユタ
「チエク」、「チユーク」とも言う。1のAと同じ |
〔6〕 |
@キョーデー
「兄弟」の意味。互いに同じ数を持っているとの意味で、「1、1」「2、2」といった場合に使う
Aドッコイ
「キョーデー」に意味同じ。 |
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